第七章
うんこと一緒に未来へ。人間の体の中でていねいにていねいに精製された物がなぜ汚物化するのかいまいち納得行かない。責任者出てこい!絶対悪うんこ。
「なんでさー人を刺しちゃいけないんだよ。あ〜?魚屋やってさ、奥さんサンマやすいよなんて言うのが楽しいのと同じくらい俺にとって意義がある。一瞬ハイライトになって吸い込まれるようにボディというさやにおさまる。俺の仕事は帰るところのない子たちに故郷をあっせんしてやることだ。」
いまでは珍しいイギリスのスウェーデン地方(ほんとなんだって)で、一人娘を取り返すために初めて不本意ながらマーダーのために鋳鉄されたナイフをダビーは愛おしそうに転がしながらキレるようにぼそっと言う。通常ナイフは不純物なしで作られるが、融点を上げるために複数の不純物が混ぜてあり、二枚の違う鉄を張り合わせて(?)一本にしてある不思議な構造らしい。よくわかんないけど。じじい、苦労したんだな。娘、かわいかったんだな。
「イギリスのひなびた古道具屋で手に入れたとき、コイツは裸だった。サヤがなかったんだ。」
指で転がす。もてあそばれる。許すマーダーズナイフ。
「おれたちがツガイを求めるように、コイツにも収まるべきさやが必要なんだが、見つけてやるたびにさやが壊れる。求めて走って。好きで好きで好きで相手に受け止めてもらいたくって、その結果相手を破綻させちまう。コイツは死ぬしかないのか?まわりを生かすのと同じくらいコイツだって生きていっていいはずだ。う〜ん、惑星で一人残った王様になるしかねえなあ。はは。」
「受け止めてやれるやつがいれば、なにがあっても受けとめてやれるやつさえいればいいのさそれだけだそれだけ。なにもないそれだけだ、ほんとにそれだけだそれだけだ、それだけだ。」
突如キたダビーを連れが遮る。
「わかってるよダビー、わかってる。」
ダビーはしばらく月のなかで見えるはずの無いウサギを見つめて白い息の広がりに有機的関連を見い出していたが、ふと体の中に残った精液をしとりと出すかのようにつぶやいた。
「壊れる。それは拒否なんだ」
月明かりのなかで、じじいナイフが身をまたたいたかようにみえた。サーモスタットの原理だ。収縮率の違いだろうか。
ダビーが月にナイフをかざす。月がサヤになればいいのに。サヤカは青白い光のせいで寂しげに見えるダビーを見上げ、ささやかに思った。私はどんなことがあってもダビーについていくだろう。たとえ操られていたって住宅に突っ込んだダンプは家と結ばれたに違いないのだ。
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