第二章
僕のうちの居間。暖炉がパチパチ。まあるいじゅうたんはインディアンがせっせと編んだテノコンダモノと母親said。でもソファーに踏まれて満足かい?
今日はダチのヨーコが最近クラブで追っかけてるツヨシでモチキリ。あたまパンパンって感じ。
「ツヨシの目がスキ!顔がスキ!やさしいところもスキー。ぶっきらぼうでツメタイけどスキ!バイクのこと何でも知っていてスキ。足が長くてカッコいいからスキ!フクのセンスが良くてスキ!」
快感があったときの周辺ブツも快感のナカマ。カノコセッド。ソファーで目を輝かすヨーコ、オオカミ。
「性格合わないけどスキ!ツヨシの好きなグランジェ?とかいう音楽も聞いてると気が狂いそうになるけどスキ!イヌは嫌いだけどツヨシのドンはスキ!連れてってもらうクラブは嫌いだったけど今通ってるよ」
エネルギーの無駄と言いかけた僕を遮ってカノコがヨーコに突進、ソファーが悲鳴。僕はじゅうたんに感情移入かな、ちょっとうれしい。
「自分の快感なモノに何をくっつけるかよね。」
カノコ、ヨーコのルーズを奪いながらつぶやき。
「ホラ、おいしいモノにさ、ちょっとキライナモノをつけて押し込むとオッケーでしょ?あたしルーズキライだけどヨーコすきだからさ、実験ね、実験。」
「アタシのルーズ、かえしてよ」
「いだーいなるルーズベルト。ヨーコ、あなたは偉くなりたくないの?歴史は繰り返すって。」
死んだ床を鞭打つルーズ。ペチペチ。じゅうたんをうまくよけるなあ!
「近い将来あなたはまたルーズを奪われるのよ。私はその前触れにしかすぎないの。わかる?これはお告げなの。ほらお告げよ、お告げ。」
居間のテレビが速報。無駄につけてるテレビは原発の分身。放射能がテレビの裏側から何百万本も撃たれ画面で放射能の模様を作る。うそだよ。でもそんな気がするのは国民の合意だし。
「無所属の新人ヨシダタダフミ氏、得票率29万3299票で、前知事で与党推薦のタナカヨイショ氏の26万1011票を大きく抜いて知事に就任しました」
「キャー」とカノコ、テレビに突進。放射能がもれるー。
「これって29万3299の人たちから愛されたってことよね。負けたタナカなんとかだって負けたけど26万1011人に愛されたってことよ。3番目のイシガキとかゆーヤツだって、たった6万なんて悲惨な数だけど6万人に愛されたのよ。これってすごいことよね。」
でかい愛を目の当たりにしてカノコが大喜び。当惑するぼく。放射能の上にカノコ線、うわー。
「だってさ、愛されたら愛し返さなきゃいけないじゃない!悲惨な6万人だって、6万あるのよ。一人当たり6万分の1の愛しかあげらんないのよ。それで満足させられるってすごいバイタリティーよね。自分の愛がすっごくでっかいってことじゃない。すっごいよ、すっごい。」
「畑からさ、キャベツを市場におくるじゃない?」
「キャベツ?」へろへろになったルーズに顔パンのヨーコは聞いちゃいない。放射能にやられた僕がしぶしぶ返事。放射線障害でピンチなつもり。
「そうキャベツ。何千何万のキャベツ。これも愛よ。そして、よくある値が付かなくて畑のワキに捨てられてるたくさんのキャベツ。これは捨てられた愛。私もそのうちのいっこなの。」
「ほう」と僕
「外側の葉っぱが土と同化して茶色になってさ、どんどん透明になっていくの。」
「それで?」
「透明度は愛の無さを示すのよ。どんどん透明になるから知らない人にもココロが見えてくの。知られちゃうの。知られることによって自分を守れなくなるの。だからいっそう透明になるの。あなたに私のココロが見える?そうしてキャベツは腐っていくのよ。そうしないと腐ることができないの。」
僕をまっすぐ見るカノコ。
「そうやって世界は腐ってきたのよ。」
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