第四端章
「天才みっけー」
自称天才学学士アーロンである。
日々アンテナを張り世界の天才をゲッチュウ。天才とはなんたるものか、天才の根っこバーサス。なに食ってるんだろう。
今日もテレビの天才がアーロンの瞳に写って留まった。支軸の弱い彼はコマのように始終くるくるまわってなければいけないのだ。
天才に、叩いてもらうの。
ミルミル。ヨーテル。う〜んとこさーもん。
天才こそ彼の栄養。もちろん天才肌のアーロンだが。
「太陽というより月って感じでしょ。アーロンてばさ。照らしてもらって本性発揮ってとこでしょ。でしょ。でしょー。」
輝くものがあって始めて活性化する。日本型経済アー。
「ねえ、猫ってさあ始終一定ルートを一日かけて巡回ループするっていうじゃない。そのループってさ最初どうやって決められるんだと思う?こっちの道暗くてなんかヤだからこっち、みたいなさ。人間の思考だって今「自分」ってものがあるけどさ、最初はこっちイイ、こっちヤ、というホントにどーでもいい選択肢で決まる気がするね。それでこんな自我ってものが作られちゃうんだからスゴイよね。そう思うとさ、アーティストが音楽とか作るときでも最初ってヤッパどーでもいいのかもしんないざ。コテコテ手直しで成り上がっていくんだよ。過程だよ、過程。」
横で寝てたカノコが目を輝かせてむくっと起きる。
「えー、じゃあさあ、恋愛なんかもそうなのかな!最初どうでもいいってことよね。コテコテおっけーね!」
「その人の人格がもおどおしょもない、イラナイ、イラナイ、ポイッ!な人と、管理してません草ぼうぼう人格な人どおしでも「サクヒン」に仕上がったりしちゃうってことでしょお?ワアーオ!全世界50億5千万人待ってました的救世主発言よねそれって。人に好かれるとかさ、嫌われるとかさ、自分の責任じゃないからね。自分だってどうして今聴いてる音楽が好きでたまらなかったり、この人と一緒にいると安心して何でも話せるとかさ、そういうのって相手が別に頑張ってそうしてないもんね。努力でどうこうじゃないし。」
薄暗い彼の部屋はコンピュータのモニターのディスプレイライト群と最新のノーライティングボードに囲まれたアーロンの椅子から成る。アーロンはしばし煙草を吸うダンディーなしぐさをしつつ考え事をしているようだった。カノコはその横で清涼飲料水の缶をころころしていた。
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