update 2004 3.24 introduced by TPM.CO / go toマインズトップページ



BJORKインタビュー 
Rockin' on 特別臨時増刊号 ロック・フェス2003! 2003年9月19日発行 P154-P155から抜粋








インタビュアー「・・・この状況下でもあなたは自分の子供たちに「大丈夫なのよ」と言い切れますか?

BJORK「・・・どうなんだろうなあ。私ミュージシャンだし、そういった大きな問題に対する答えを知っているわけじゃないんだけど、自分の感じ方としては自然を信頼しているってことなの。私の自然に対する想いは宗教に近いのかもしれないな。もし人類が自ら破滅したり爆発しちゃうようなことがあったら、そこには自然が残って、惑星はぐるぐる回ってる。生命イコール自分達なんだっていうふうにあんまり文字通り考えない方がいいと思うんだよね。それってちょっと誇大妄想すぎない?私達だけが生命の始まりで終わりだなんて。

「でもだからこそね、一瞬一瞬を謳歌することが大事だと思うの。最後はどうなるかって話より、そっちの方が問題だと思うのよね。そしてこれは誰にもできることでしょ。まぁ私のことだから、頭の片隅で、世界は良くなるって思ってるのかもしれないけど(笑)・・・

「でもね、思うんだけど、この世の終わりを考えて怯えるのってすごく危ないわよ。それって自分にも日々の暮らしにも周りの人にも仕事にも影を落とすし、どんどん悪い方へ悪い方へと進んでいくもの。まあご存知のとおり(笑)、私は親の世代がヒッピーで、あの人達ってみんな否定的で世を救うためには何でも批判っていう姿勢だったでしょ。政府も公害も何もかも批判批判、最終的に彼らの全人生が否定の山になっちゃって、人間的にもネガティブになっちゃうのよね。85とかになってさあ死ぬぞっていう時に自分の人生とはって振り返ったら、むぅ、否定だった。みたいな」

「こっちの公害もあっちの公害も指摘した、戦争も、人類に対する残虐も指摘して回った。偉い!でもそれって実際に何か変えた?私はね、瞬間瞬間を楽しんでもっと意識を向ける先をーーこれって易経とか道教に近い考えかもしれないけど、もし問題があったら全エネルギーをそっちに向けるんじゃなくて新たな良いものを作り出そうよっていうね。問題に意識を向ければそれにエネルギーを注ぐことになってしまうんだもの。例えば私が一日中座って取材を受けながら世間のひどい音楽のことばかり話しているって考えてみて?そうじゃなくて、たしかにひどい音楽は存在する、じゃあ新しい音楽をよい音楽を作るんだって、そういうことでしょ。85になって我が人生を振り返ったら思いたいわよね、もしかして自分は少しでも物事のバランスを変えたかもしれないって。危険よ、ほんと。悪いこと考えたら、それに力を与えてしまうから」


(BJORK 音楽家・インタビュアー 山下えりか)