ETV特集シリーズ2000年への対話「日本はいまどこにいるか(第一回)〜井庭崇・宮崎駿〜」より 宮崎駿「どっかで舵を切っている人が出てきているのに、つまんない方向に舵を切っている気がしますね。 「一見目的的に生きることだとか、何かを達成しようとしてそれに自分の人生をかけるのだとか、それをやったら自分が実現するんだとかね、そういうくだらない錯覚をバラまきすぎたんですね。 「……僕はなんか味わったり感じたりすることが人生の、というか生きていくことの非常に大きな部分を占めていいんじゃないか、という疑念をもっているものですから、……ただ…実際はこんな仕事をやっちゃったものですから、何か作んなきゃいけないってことにしょっちゅうムチ打たれて、自分をムチ打ってね、まわりをムチ打ってね巻き込んでヒドイ目に合わせて生きてるものですから…。 「ただ、全員が目標を持つんじゃないんです。それが判らなきゃいけないんです。目標を持つか持たないかで分けちゃうからいけないんで、ある瞬間は目標を持つけど、その他は忘れてね「今日はいい天気だな」とボーッとしているっていうのも……。そういうのが混ざって一人の人間ができてくると考えれば……。 「何か自己実現のためとか、表現のためだと言って、わさわさとね、猛烈に活動している人間が善だ、という考えは…、それはおかしいよね。 「あのお祭りをうまくやろう」てんでオヤジが燃え上がって、ワーッとやるときは皆イキイキするけれど、それ終わったらね「イヤー面白かったね」と言いながら停滞している、ていう風なことができる風な生き方が一番皆の……、たぶん味わう人生であったらいいと思うんです。 |